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毎日が誰かの記念日。街に愛されるケーキ店「Anniversary　早稲田店」

2018年02月21日水曜日

オーブンから香る焼きたてのお菓子の匂いは、大人も子どももワクワクさせる不思議な力を持っている。早稲田の街紹介第二回目は記念日のケーキや焼き菓子が有名なお店、「Anniversary 早稲田店」をご紹介。早稲田店店長の松川愛さんにお話を伺った。

日本初「食べられるウエディングケーキ」

早稲田大学を背にして早大通りを暫く歩いていると、甘い焼き菓子の匂いに思わず足が止まる。白塗りの壁に淡い緑のドア。女の子が一度は憧れるドールハウスがそこにあった。ここ「Anniversary 早稲田店」はその名の通り記念日に贈る、少し特別なスイーツを販売しているお店。元々は「ウエディングケーキがつくれるケーキ店」として始まったのだとか。

「ウエディングケーキは少し前まで、食べられないイミテーションのものが使われていたんです」と松川さん。今ではもう当たり前のように結婚式で食べられるウエディングケーキ。しかし少し前までの日本では、幾重にも重なったケーキをつくる技術がなく、食べられない偽物を使っていた。そのことを疑問に思ったオーナーの本橋雅人さんは、「見た目も美しくおいしいウエディングケーキをつくって、お客様の特別な日を彩りたい」という想いを抱き、単身で渡英。本格的なシュガークラフトを学び、日本で初めて食べられるウエディングケーキを実現させた。

まんまるショートケーキに込められた想い

「早稲田は穏やかな街ですよ」と松川さん。アクセスも良いためケーキの配送にもってこいだ。本橋さんは早大通りの緑あふれる並木道が気に入って、ここに店を構えたのだという。早稲田にはファミリー層が多く暮らしているため、訪れる人は家族連れや学生が多い。

学生たちは友人や教授のために誕生日ケーキを買っていくことも。「うちのショートケーキは他のお店と少しちがうんですよ」と松川さん。見ると、まるで小さな誕生日ケーキ。赤く光るいちごがロウソクのようで、見ているだけでワクワクしてしまう。ホールケーキをまるごとひとつ食べるような贅沢感を感じてもらえるように、この姿になっている。小さい頃、誕生日ケーキを独り占めしたいと思っていた人も少なくはないだろう。スポンジケーキを丸くくり抜き、ホールケーキのようにひとつひとつデコレーションすると一般的なショートケーキに比べてかなりの手間と時間がかかってしまう。それでもこのショートケーキをつくり続けるのは、食べる人への想いが原動力になっているからだ。

子どもたちを笑顔にするデコレーション

「土日は子どもたちがたくさん来てくれるので、ありがたいことに忙しくしています」と松川さんは話す。お店に来てくれる子どもたちに、もっと喜んでもらいたい。そんな理由からショーケースの中にはうさぎやひよこなど、可愛らしいデコレーションケーキが並ぶ。店内にあるケーキのほとんどが、松川さんやパティシエさんたちが考えたものだ。その土地に住む人や訪れる人を想ってケーキを考えるのだとか。お客様との心の距離が近いのだろう。そんな方々が働いているお店だからか、なんだか居心地が良い。

取材に伺った時には栗やさつまいもを使った焼き菓子や、ハロウィンのオーナメントなど店内は秋一色に染まっていた。季節ごとにデザインが変わるアイシングクッキーも、パティシエさんたちがイラストを起こし、何度も試作を重ねて商品化されている。「デザインを考えるのは大変ですが、みんなで話し合いながら商品をつくっていくのは楽しいですね」と松川さんは笑う。どんどん機械化されていく暮らしの中で、こういった人の温かみを感じられるものはずっと残っていてほしい。

これからも記念日に美味しさと彩りを

Anniversaryでは店舗問わず、オーダーメイドのデコレーションケーキを依頼することができる。世界に一つ、自分だけのデコレーションケーキは、子どもにはもちろん大人の方にも喜ばれるという。「毎日が誰かの記念日なんです。そんな記念日を大切にしたいと思っています」と松川さん。

デコレーション技術を取得するまでにかかる期間は少なくとも2～3年。パティシエさんたちは仕事が終わった夜の厨房で練習しているのだという。ケーキの華やかさとは裏腹に、コツコツと積み重ねてきた努力。職人とはこのことを指すのだろう。松川さんたちの想いと努力が詰まったケーキは、今日も誰かの記念日を彩っている。早稲田の人々の心にほんのり灯りをともしてくれるAnniversary 早稲田店。次は、この街でどんなお店に出会えるだろう。